近所をお散歩していると、金木犀の爽やかな香りが漂い秋の深まりを感じます。さて、今回は子供が遊ぶ場所と免疫システムの関係について、フィンランドの大変興味深い研究(出典1)をご紹介しましょう。
街中の保育所(デイケアセンター)がリノベーションを施して、子供たちが遊ぶ場所を「フォレストフロア」にしたところ、子供たちの免疫システムに良い変化をもたらすことが分かりました。「フォレストフロア」とは直訳すると「森の床」。そうです、森の中のような自然の草木や土で敷き詰められた床というニュアンスです。その研究によると、そこで遊んだ子供達はわずか1ヶ月のうちに多様なマイクロバイオーム(腸内細菌と皮膚細菌)を持つようになったことが判明したのです。多種なマイクロバイオームを持つようになったということは、免疫システムが強くなったことを示しています。
この研究は3歳から5歳の子供を対象に行われました。リノベーション前、子供達はコンクリートや除菌された砂が敷き詰められた園庭で遊んでいました。それを自然の草木や土で敷き詰められた園庭にリノベーションした後たった28日間で、この保育所の子供達は、一般的な街中の保育所の子供達に比べ、明らかに多様な腸内細菌・皮膚細菌、そしてT細胞・抗炎症タンパク質を持つようになったことが分かりました。
さらに自然の草木や土で敷き詰められた園庭で遊ぶ子供達の腸内細菌叢が、毎日本物の森で遊んでいる子供たちの腸内細菌叢と類似していることも判明したのです。この研究で明らかになったのは、子供たちにとって自然の中で遊んだり、時にはどろんこになったりすることも、マイクロバイオームを育て、健康な免疫力を高めるためには必要である、ということです。なんでも除菌された清潔すぎる環境は子供には適さない、ということでしょう。
また別の研究では、現代の生活環境におけるバイオダイバーシティ(生物多様性)の低下が免疫力の低下にも影響しており、さらにそれが自己免疫疾患の有病率を上昇させる一因になっていると発表されました。免疫システムは、様々な微生物に暴露されることによって強化されていくものです。ですので子供達には、可能な限り自然の中でのびのびと遊んで欲しいと思います。免疫力の向上のためだけではなく、メンタルヘルスにもとても良い影響があることも明らかになっています。
多くの科学者や医師は、過度に衛生的過ぎる環境がマイクロバイオームのみならず、健康的な免疫システムにも影響を与える可能性があることを懸念しています。これは今だけの問題ではなく、子供達だけの問題でもありません。私の新著『最強でエレガントな免疫を作る100のレッスンで』でもこのテーマについて触れています。ご興味があればぜひご覧になってみてください。
Lots of Love, Erica
出典1:Roslund MI, Puhakka R, Grönroos M, Nurminen N, Oikarinen S, Gazali AM, Cinek O, Kramná L, Siter N, Vari HK, Soininen L, Parajuli A, Rajaniemi J, Kinnunen T, Laitinen OH, Hyöty H, Sinkkonen A; ADELE research group. Biodiversity intervention enhances immune regulation and health-associated commensal microbiota among daycare children. Sci Adv. 2020 Oct 14;6(42):eaba2578. doi: 10.1126/sciadv.aba2578. PMID: 33055153; PMCID: PMC7556828.
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