都市部に住んでいる方にとっては、夜間でも明るいのは当たり前。特に“眠らない街”と呼ばれている東京やニューヨークなどの大都会は、昼夜通して明るいネオンに照らされています。
明るい夜の何が問題なのでしょうか?
11万人の女性を対象に行った大規模な研究(出典1)によって、街灯・広告看板のネオン等の人工的な光が集中している都市部に住む被験者は、乳がんの発症リスクが高いことが判明したのです。15年以上もの年月をかけて行われたこの研究は、アメリカ国防省の防衛気象衛星計画(DMSP)によって撮影された画像から、被験者の自宅周辺の光のレベルを測定するという大掛かりなものでした。この研究の結果、夜間の光レベルが高い地域に居住する女性ほど、乳がん発症リスクが高くなることが明らかになったのです。また、夜間シフトで働く女性も乳がん発症率が高いことも判明しています。その他、15年以上かけて約10万人の女性教師を対象とした研究でも(出典3)、夜間に人工的な光を浴びると乳がんの発症リスクが高まったという同様の結果が出ています。
なぜ人工的な光が乳がん発症リスクを高めるのでしょうか?
睡眠に必要不可欠なホルモン「メラトニン」は通常体内で作られ分泌されます。メラトニンは抗酸化作用が高く、抗がん効果も期待できます。しかし、夜間に人工的な光を多く浴びてしまうと、メラトニンの生成・分泌調整機能が乱れ、免疫力が低下し、がん細胞が悪さをしやすい環境を作り出してしまうことがあるのです。乳がん患者は、そうではない被験者よりもメラトニン濃度が低く、メラトニン濃度が低いと、特定の乳がん細胞の成長を刺激するということも研究(出典4)で判明しています。
また、夜間に人工的な光を浴びることによって、概日リズム(体内時計)の狂いが生じます。(時差ボケが起こるのはこの為です。)
人間は、古来より太陽が昇ってから沈むまでの約12時間と、沈んでからまた昇るまでの約12時間のサイクルを繰り返しながら進化してきました。ですから私たちの身体は、昼は明るさを、そして夜は暗さを求めているのです。よって夜間でも人工的な明るい光に囲まれている生活はこのサイクルに反しており、乳がん発症リスクに関連する体内のエストロゲン(女性ホルモン)調節機能を狂わせてしまうのです。
乳がん発症の要因として、食生活やライフスタイル、また生活環境など、様々な要因が挙げられます。その一つとして考えられる夜間のブルーライト(スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどの)を含む人工的な光を極力避けることは、自身でできる有効な乳がん予防と言えるでしょう。ナイトシフトモードや、時刻に合わせてスクリーンの光を調節できるソフトウェアを利用するのも良いと思います。また、ブルーライトの吸収をカットするメガネを使用するのも効果的でしょう。読書ライトを、ブルーライトを放出しないものに変えるのも良いと思います。幾つかの研究(出典5)では、ブルーライトカットの機能がついたメガネをかけることで、明るい部屋で電子機器を利用していても、暗いところで生成されるのと同じ量のメラトニンが生成されることが判りました。また、寝室に遮光性のカーテンやブラインドを新調されてみてはいかがでしょうか? アイマスクの使用もオススメです。
乳がんに関する以前の投稿もご参照ください:
乳がん予防に吉報!最新研究で明らかになったエキストラバージンオリーブオイルの新たな効果:https://goo.gl/BYQsEQ
親愛なる日本の皆さんへ「乳がんからあなたを守るのはあなた自身です」:https://goo.gl/YaxaUn
10代からもっと食物繊維を!未来のあなたの為の乳がん予防:https://goo.gl/88Hsww
その一杯のドリンクのチョイスでリスク軽減!?砂糖の過剰摂取と乳がんの関係:https://goo.gl/wMabh3
風邪薬を飲む前に知ってほしい。抗生物質が引き起こす糖尿病、乳がんのリスク:https://goo.gl/S4YSQi
乳がんから自分の身体を守るためだけでなく、睡眠の質を向上させるためにも、より若々しく艶のある肌を維持するためにも、そしてベストな体重を保つためにも、人工的な光やブルーライトは極力避けて欲しいと思います。あなたがいつまでもハッピーで美しくいるために出来ることから始めましょう。
Lots of Love, Erica
出典1: James, P., Bertrand, K.A., Hart, J. E., Schernhammer, E., Tamimi, R. M., & Laden, F. (2017). Outdoor Light at Night and Breast Cancer Incidence in the Nurses’ Health Study II. Environmental Health Perspectives, DOI: 10.1289/EHP935
出典2:Hurley, S., Goldberg, D., Nelson, D., Hertz, A., Horn-Ross, P. L., Bernstein, L., & Reynolds, P. (2014). Light at night and breast cancer risk among California teachers. Epidemiology (Cambridge, Mass.), 25(5), 697–706. http://doi.org/10.1097/EDE.0000000000000137
出典3:Gooley, J. J., Chamberlain, K., Smith, K. A., Khalsa, S. B. S., Rajaratnam, S. M. W., Van Reen, E., … Lockley, S. W. (2011). Exposure to room light before bedtime suppresses melatonin onset and shortens melatonin duration in humans. The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 96(3), E463–E472. http://doi.org/10.1210/jc.2010-2098
出典4:Schernhammer, E. S., & Hankinson, S. E. (2009). Urinary melatonin levels and postmenopausal breast cancer risk in the nurses’ health study cohort. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention : A Publication of the American Association for Cancer Research, Cosponsored by the American Society of Preventive Oncology, 18(1), 74–79. http://doi.org/10.1158/1055-9965.EPI-08-0637
出典5:Wood, B., Rea, M.S., Pilitnick, B., & Figueiro, M. G. (2013). Light level and duration of exposure determine the impact of self-luminous tablets on melatonin suppression. Appl Ergon, 44(2):237-40. doi: 10.1016/j.apergo.2012.07.008.
Sasseville, A., Paquet, N., Sévigny, J., & Hébert, M. (2006), Blue blocker glasses impede the capacity of bright light to suppress melatonin production. Journal of Pineal Research, 41: 73–78. doi:10.1111/j.1600-079X.2006.00332.x
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