以前からも何度かお話してきましたが、ナッツ類は私たちの美と健康に様々な効果をもたらします。ナッツ類を定期的に食べると、記憶力・脳機能が高まったり、アルツハイマー病予防にも効果があるだけでなく(出典1、2)、他にも心臓病や糖尿病の予防、コレステロール値の低下、血管弛緩、血糖値管理などにもにも有効です。(出典3)
今年の6月に発表された研究(出典4)で、ナッツ類には長寿にも効果があるということが判りました。この研究は55〜69歳のオランダ人男女12万人を対象に行われ、調査は10年以上に及びました。その結果、アーモンド、クルミ、ピーナッツといったナッツ類を一日約15g(手の平に半分ほど)摂取した被験者は、そうでない被験者より死亡リスクが23%も低かったそうです。さらに、ガンや心臓病を含む慢性疾患の発症率もナッツ類を摂取した被験者の方が低く、例えば神経変性疾患は45%、呼吸器系疾患は39%、糖尿病は30%も低いという結果となりました。
しかし、興味深いことに、ナッツ類をたくさん摂取すればするほど死亡リスクが下がるというわけではなく、あくまでも手の平に半分ほどの量が十分であり、かつ適量だとのことです。
それでは、なぜナッツ類にはこのような強力な健康効果があるのでしょうか?ナッツ類はビタミン、ミネラル、食物繊維、たんぱく質、そして一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸などの良質な脂肪、抗酸化物質とフィトケミカルといった必須栄養素を豊富に含むからです。特に抗酸化物質とフィトケミカルには抗炎症作用があり、フリーラジカルや酸化から身体を守ってくれます。ナッツ類は私たちにとっていわば「天然のサプリメント」のようなものなのです。
アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカデミアナッツ、ピーカンナッツ、松の実、ピスタチオ、クルミ、ピーナッツを含むすべてのナッツ類は、32g当たり160〜200kcalで、14〜19gの良質な脂肪、そして2〜6gの良質の植物性たんぱく質を含むという共通点があります。
逆に栄養素の面で異なる点として、例えば、クルミは心臓機能を改善するα—リノレン酸(植物性のオメガ3脂肪酸)の含有量が最も多いのに対し、アーモンドはカルシウムとビタミンEを最も豊富に含みます。また、マカデミアナッツはカロリーと脂肪分が最も高いのに対し、栗はカロリーと脂肪分が最も低かったりと、それぞれに特徴があります。そして、ピーナッツは、ナッツ類ではなく実は豆類に分類され、ぶどうや赤ワインなどに含まれる抗がん性物質レスベラトロールを含んでいます。
特にクルミは栄養価が豊富で、オメガ3脂肪酸、ビタミンE、葉酸、抗酸化物質、メラトニンを豊富に含むため、物忘れや記憶力低下予防に効果があります。最近行われた研究(出典5)でも、クルミを日々の食事に取り入れた被験者は、そうでない被験者よりも認知機能検査で良い結果が得られたということも判っています。とは言っても、クルミだけでなくナッツ類全般が栄養面で優れているため、様々なナッツを試してみることをおすすめします。
また、ナッツ類を食べると満足感が得られ、他の食べ物よりも空腹感を感じにくいという研究結果も出ています。ただし、ナッツ類は無添加のものを選ぶようにしてください。そのまま食べるか、もしくはドライフルーツと一緒におやつや食後のデザートとして食べたり、色々なお料理(例えば、サラダ、グラノーラ、ヨーグルト、スムージー、おにぎりなど)のトッピングに使ってみたりして、日々の食生活に積極的に取り入れるようにしましょう。
今回の研究では一日15g(手の平に半分ほど)という結果でしたが、ナッツ類に関しては多くの研究が行われており、長寿以外にも様々な効果が報告されています。一日の理想摂取量は?という質問を私もよく受けますが、なるべく多くの種類を一日手の平半分から軽くいっぱい程度食べるのが理想的です。
Lots of Love, Erica
(出典1) Valls-Pedret, C., et al, “Mediterranean Diet and Age-Related Cognitive Decline, JAMA Internal Medicine, July 1 2015, vol 175, no. 7, pp: 1094-1103.
(出典2) Lourida, I., et al., “Mediterranean diet, cognitive function, and dementia: a systematic review,” Epidemiology, 2013, vol. 24, no. 4, pp: 479-489.
(出典3) Luu, H., et al., “Prospective Evaluation of the Association of Nut/Peanut Consumption With Total and Cause-Specific Mortality,” JAMA Internal Medicine, May 2015, vol. 175, no. 5, pp: 755-766.
(出典4) Van den Brandt, P. A., et al., “Relationship of tree nut, peanut, and peanut butter intake with total and cause-specific mortality: a cohort study and meta-analysis,” International Journal of Epidemiology, June 2015, doi: 10.1093/ije/dyv039
(出典5) Arab, L., et al., “A cross sectional study of the association between walnut consumption and cognitive function among adult us populations represented in NHANES,” The Journal of Nutrition, Health & Aging, March 2015, vol. 19, no. 3, pp: 284-290.
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