みなさんが最近「感謝」したのはいつ、どのようなことに対してだったでしょうか?何かに感謝することはとても気持ちのいいものですね。心が穏やかになり、優しく温かい気持ちで満ち溢れます。実は、この感謝の気持ちは私たちの心にだけでなく、身体の健康にも大きく関係しているのです。健康的な食生活や良質の睡眠、定期的なエクササイズはもちろんのこと、お世話になっている人々に感謝の手紙を書いたり、家族や友達にその思いを電話で伝えたり、日記に綴ったりすることは、私たちの心をハッピーにしてくれるだけでなく、実際に心臓の健康状態にも良い効果を与えるのです。
約200名の無症候性心不全(ステージB)の患者を対象に3ヶ月間行われた研究(出典1)で、心理テストを行い「感謝値」の測定をしたところ、感謝値が高い被験患者ほど、心の安定、睡眠の質の向上、疲労感の軽減、そして心臓の健康状態に関連する炎症マーカー値の低下が確認されました。ちなみに、ステージBとは、心臓に器質的障害はあっても心不全症状がない段階のことを示し、病気の進行を食い止めるための非常に大切な期間です。その上の段階であるステージC(症候性心不全)にまで症状が進んでしまうと、死亡率が5倍まで高まってしまいます。
この研究の更なる調査で、被験患者の一部には、感謝したことを3つ日記に書き出すという行為を8週間続けてもらいました。その結果、その被験患者たちの炎症マーカー値は低下し、日記に書いている最中には心拍変動の上昇がみられたのです。心拍変動の上昇とは、心臓リスクの減少を示します。このように、感謝日記を付けることが心臓の健康状態を保つ上で簡単に出来る方法の一つであるということが証明されたのです。
感謝の気持ちと心臓の健康状態に関連する研究はこれだけではなく、それ以前に行われた研究(出典2)でも同様の結果が出ており、ポジティブな気持ちや感謝の気持ちが心拍変動にも良い結果をもたらしたのです。また、心臓への影響だけではなく、幸福感の強化、孤独感やストレスの軽減、人間関係の改善、免疫力アップにも効果があったという研究結果(出典3)も出ています。
このように感謝の気持ちを持つことは、私たち自身の心の健康だけでなく、身体の健康にもいいのです。私たちはつい感謝の気持ちを忘れて何事も当たり前のことだと思ってしまったり、今ある状況を自分の力だけで成し遂げたと考えてしまいがちですが、実は周りの人たちの助けがなければ出来なかったことの方が多いのではないでしょうか。普段見落としがちな感謝の気持ちに気付くためにも、どんなに些細なことでもいいので、今日から感謝の気持ちを書き出してみましょう。例えば、いつも楽しい時間を一緒に過ごしてくれる家族やパートナー、親友やペットたち。または、美味しいコーヒー、寒い日にあなたを守ってくれるコートやスカーフなど。対象は何でもいいのです。そして、その気持ちを書いたメッセージカードを家族や友人に送ってみてはいかがでしょう。または、お気に入りのノートを見つけて感謝日記をつけたり、素敵な感謝貯金箱を作って日々の感謝を書き留めた紙をそこに貯めていくのもいいですね。
たとえあなたの人生が困難に思えるものだとしても、どんなに小さなことでも良いので、毎日感謝できることを必ず見つけるようにしてください。そうすることで、あなたの精神状態のみならず心臓をはじめとする身体にもきっと良い効果が現れはじめることでしょう。
Lots of Love, Erica
(出典1) Mills, P., et al., “The role of gratitude in spiritual well-being in asymptomatic heart failure patients,” Spirituality in Clinical Practice, April 2015, vol. 2, no. 1, pp: 5-17.
(出典2) McCraty, R., et al., “The effects of emotions on short-term power spectrum analysis of heart rate variability, American Journal of Cardiology, 1995, vol. 76, no. 14, pp: 1089-1093.
(出典3) Wood, A. M. et al., “The role of gratitude in the development of social support, stress, and depression: Two longitudinal studies,” Journal of Research in Personality, 2008, vol. 42, pp: 854-871.
Comments are closed.