今年も残すところあと数週間となりました。一層慌ただしくなるこの時期、時間がなくつい手軽なファーストフードやジャンクフード等で食事を済ませてしまう方も少なくないかもしれません。それらの食事は確かに便利ですが、依存してしまうと美容のみならず体そして心の健康にまでも大きな影響を及ぼします。 本日はファーストフードやジャンクフード等と心の健康についてお話ししたいと思います。
ひと昔前の日本で、うつ病という言葉を耳にすることはそうなかったのではないでしょうか。ここまで周知されたのはここ数年になってのことかと思います。統計によると(出典1)1996年には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、2008年には104.1万人と12年間で2.4倍に激増しています。その後若干の減少が見られた年もあるものの、2017年には127.6万人とその患者数は増加の一途をたどっています。この「患者調査」は、医療機関に受診している患者数の統計データで、うつ病患者の受診率は低いことがわかっている為、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されます。
なぜここまで患者数が増えたのでしょうか?この劇的な増加の原因の1つとして、食生活と現代のライフスタイルが考えられています。
16歳〜72歳の10万人以上の被験者を対象とした40以上の実験をもとに分析したある大規模な研究(出典2)によって、ファーストフード、ジャンクフード、精製された炭水化物、そして悪質な脂肪分を含む食事によって、うつ病の発症リスクがなんと40%も増加することが判ったのです。
それとは対象的に、カラフルな野菜やフルーツ、魚介類、ナッツ類、全粒穀物類、マメ科植物等の精製されていない自然食品を主に食している被験者は、うつ病患者が少ないということも判明しました。
では、なぜファーストフードやジャンクフード等がうつ病発症の原因となるのでしょか?
それは、それらを食すると、消化器系及び体内が炎症(「全身性炎症」と呼ばれる)することが判っています。そしてその慢性的な全身性炎症によって、炎症を誘発する(または悪性の)物質が脳に輸送され、それが私たちの気分を左右する神経伝達物質、さらに心の健康に影響を与えるのです。その炎症によって、皮膚の老化も加速します。
炎症を引き起こすだけでなく、ジャンクフードや加工食品を多く摂る食生活を送っている人は、しばしば必須栄養素の不足が認められます。脳と体の神経伝達物質を作るためには栄養素が必要な為、栄養素の欠乏は私たちの精神状態や気分に影響を及ぼします。
また、ファーストフードやジャンクフードそして加工食品等は、腸内細菌叢(腸内フローラ)に悪影響を与えるとされ、それが神経伝達物質や気分を左右することも判っています。
逆にオメガ3脂肪酸(魚、クルミ、海藻に含まれる)、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、鉄、マグネシウム、亜鉛などの特定の栄養素はうつ病の予防に効果があることが判っています。
以上のことから、食の質は私たちの気分や心の健康に様々な影響することがお分かりいただけたと思います。
この食の質とうつ病の関係性については、実に多くの研究が発表されています。その内の1つ、スペインでの大規模な研究(出典3)では、ファーストフード(ピザ、ハンバーガー、ホットドッグ、フライドポテト、フライドチキン、そして市販の焼き菓子:白パン、甘いパン、ケーキ、ドーナツ、ペストリー等)を食べる人は、食べない(または極たまに食べる)人よりもうつ病を発症する可能性が51%も高かったのです。
この研究により、ファーストフードを多く食べる人ほど、うつ病との関連性が高まることが確認されました。
また、別の研究(出典4)でも、加工食品の摂取量の多さとうつ病や気分の落ち込みに関連性が認められました。
そして今年発表された大規模な研究(出典5)でも、食事の主がファーストフードや加工食品である人は、うつ病発症数が最も多く、不安を感じている人が最も多いことが報告されています。
ストレスが溜まった時、時間がない時に、ドーナツやペストリーや甘い菓子パンについ手を伸ばしてしまいがちです。一時的にはストレスが発散され、気分が良くなったように感じるかもしれません。しかし実際はその逆の効果を及ぼしているわけです。
幾度となくお伝えしていますが、「あなたは食べたものでできている」のです。何を摂るか摂らないかはあなたの健康や美しさのみならず、気分までをも左右するのです。
ですから、時間が許す時には、ジャンクフードやファーストフード、加工食品は極力避けることをお勧めします。
食材を選び、調理して、味わって食することに時間を費やすというのは、あなたの体と心の健康と美容そして将来の幸せの為の何よりも素晴らしい投資なのです。
Lots of Love, Erica
出典1: 厚生労働省「患者調査」
出典2: Tolkien, K., Bradburn, S., Margatroyd, C. (2019). An anti-inflammatory diet as a potential intervention for depressive disorders: A systematic review and meta-analysis. Clinical Nutrition. S0261-5614(18)32540-8. doi: 10.1016/j.clnu.2018.11.007.
出典3: Sanchez-Villegas, Almudena & Toledo, Estefania & de Irala, Jokin & Ruiz-Canela, Miguel & Pla-Vidal, Jorge & Martínez-González, Miguel. (2012). Fast-food and commercial baked goods consumption and the risk of depression. Public Health Nutrition. 15(3):424-32. doi: 10.1017/S1368980011001856.
出典4: Akbaraly, T. N., Brunner, E. J., Ferrie, J. E., Marmot, M. G., Kivimaki, M., & Singh-Manoux, A. (2009). Dietary pattern and depressive symptoms in middle age. The British journal of psychiatry : the journal of mental science, 195(5), 408–413. doi:10.1192/bjp.bp.108.058925
出典5: Banta, J. E., Segovia-Siapco, G., Crocker, C. B., Montoya, D., Alhusseini, N. (2019). Mental health status and dietary intake among California adults: a population-based survey. International Journal of Food Sciences and Nutrition. Vol. 70. No. 6.
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