他の人と全く同じ食事を同じ量だけとっているのに、なぜ自分だけ太りやすいのだろう・・・と、疑問に思ったことはありませんか?
同じ食事をとっても、どう代謝されるかは、人それぞれで異なるということが、最新の研究(出典1)で明らかになりました。他人にとっての健康的な食事が、あなたにとっては同じように健康的であるとは限らず、それどころか体重増加の原因になる可能性さえあるのです。非常に興味深いのは、食品ごとの設定値であると思われていたGI値にも、実は個人差があるということです。
以前にも血糖値コントロールの重要性についてお話しましたが、慢性的な高血糖の状態は、糖尿病の発症リスクを大きく高める原因となります。また、肥満やメタボリックシンドローム、脂肪肝、中性脂肪値の上昇、さらにはシミやシワなどの皮膚老化など、さまざまな老化の原因にも深く関連しています。
イスラエルで実施されたこの研究では、被験者がとった46,898食分の食事の影響を測定しました。研究チームは、被験者の健康に関するアンケートにはじまり、身体測定や血液検査、血糖値観察に検便、さらにはモバイルアプリまでをも駆使して必要な情報を集積しています。調査を行った1週間、血糖値計測器を身に付け5分ごとに測定を行うほど徹底したものでした。
想定していた仮説通り、年齢とBMI値は食後の血糖値と関連していました。ところが、同じ食品を摂取したときの反応が、被験者により大きく異なっていたのが想定外の発見だったのです。
被験者の一人である中年女性の例を見てみましょう。彼女は、肥満で糖尿病前症の症状があり、健康的な食事を心がけ様々な食事法を試してきましたが、どれも良い効果がみられませんでした。そんな彼女が意識して毎日食べているトマトによって血糖値が急上昇していることが、この調査で認められました。彼女が“健康によい”と信じて食べてきたトマトは、実は体重増加や体調不良などの原因になり兼ねないということが判明したのです。
また、別の例として、お寿司を食べた後の血糖値上昇率が、アイスクリームを食べた後よりも高いという被験者もいました。この研究により、食事の内容と血糖値上昇の関係には、相当の個人差が存在するということが明らかになったわけです。
では、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?その原因を探るため、検便により被験者の腸内フローラの分析を行ったところ、特定の腸内微生物が、食後の血糖値上昇率に関係していることが判明しました。
次に、各被験者に適した個別の食事メニューを組んだところ、食後にみられた血糖値の急上昇は抑えられ、さらには腸内環境にも良い変化がみられました。これらの研究結果は、まさに「個別栄養管理の重要性」を確証していると言えます。私たち一人一人の身体が必要としている栄養分や食べ物に対する反応はそれぞれ異なるのですから、栄養管理指導も相応に多様であるべきなのです。
他の誰かにとって良いとされる食事が、必ずしもあなたに同じ効果をもたらしてくれるとは限りません。ですから、憧れのモデルやセレブが行っている流行の食事法だとか、スーパーフードとして宣伝されている目新しい食品などにやみくもに飛びついてしまう前に、まずはあなたの身体の反応をよく観察してみてください。
できるだけ詳細な食日記をつけて、日々の体調や症状を書き留めていくことをお勧めします。消化や睡眠の状態、気分や体重の変化などについてもメモしていくと良いでしょう。次第に自分の身体の声が聞こえてくるようになるはずです。血糖値コントロールの鍵は、食習慣にあります。型にはまらず、特別なあなたのための、特別な食習慣をみつけましょう!!
Lots of Love, Erica
(出典1): Zeevi, D., et al., “Personalized nutrition by prediction of glycemic responses,” Cell, November 2015, vol. 163, pp:1079-1094.
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