最近では長時間椅子に座ったままの生活を送っている人も多いかもしれませんが、これがどれだけ健康に悪いかご存じですか?多くの研究結果が長時間座っていることによって肥満や2型糖尿病、心臓疾患を引き起こすリスクが高まることを示しています。
最近の研究(出典1)によると、1日に11時間以上座っている人は1日に4時間未満座っている人に比べて、3年以内に死亡するリスクが40%も高いということが分かりました。 さらに、別の研究(出典2)によると、1日の大半を座って過ごす人は、そうでない人に比べると心臓発作によって死亡するリスクが54%も高いということです。そして、これらの研究によって〝Sitting Disease″(座位病)という病名が生まれた程です。どれだけ定期的に運動したり、健康的な食事をしていても、1日中椅子に座っていることの悪影響を帳消しにすることはできないということなのです。
座っていることの最大の問題は筋肉の活動が止まってしまうということ、つまり、筋肉の電気信号が停止するということです。このことによって、代謝に多くの悪影響を及ぼします。筋肉には血糖(グルコース)をエネルギーとして取り込むなど、重要な働きがあります。筋肉はたった一回の収縮だけでもこのグルコースを取り込むことができるのですが、逆に活動しない時間が長くなると筋肉に血液が流れにくくなってしまいます。血液から十分なグルコースを取り込めなくなると、日中に血糖値が上がる確率が高くなり、その結果として2型糖尿病のリスクが高まることになってしまいます。
さらには、長時間座り続けていると、重力の作用に加え、血行が悪くなることで、下腿に体液がたまることになります。座っていると体液が循環しなくなるため、体液が滞留してしまいます。また、一日中座っていると、腰や太腿裏、股関節屈筋が凝り固まってしまいます。こうして長時間座り続けることの弊害が日々積み重ねられてしまうのです。
それだけではなく、長時間座り続けることは、太る原因にもなります。別の研究(出典3)によると、座っている時には脂肪を燃焼する酵素であるリパーゼが働かないということです。その反対に、立っているだけでもリパーゼの放出は促進され、体内の脂肪やコレステロールの分解が促されるそうです。そして、立つことは、その姿勢を保つために筋肉を使うため、座っている時より多くのカロリーを消費します。最近では、1日中立っている人は座っている人に比べカロリーを13%多く消費するという研究結果(出典4)も出ています。また、別の研究(出典5)では、1日中立っている人は善玉コレステロール値を改善した一方で、座っている人は善玉コレステロール値を22%低下させたということです。
1日8時間オフィスで座り続けていることは、身体に悪いことなのです。例え、仕事帰りにジムに行ったとしても、このことに変わりはありません。これは、肥満体型であっても、マラソン選手のように痩せていても、体型にも関係なく言えることなのです。長時間座りっぱなしでいると早期の死を招きかねません。
それでは、実際にはどうしたらよいでしょう?ちょっとした心掛けで大きな効果が得られます。それには、できるだけ動きまわり、同じ姿勢でいることを避けることが鍵となりますが、まずは以下のことを心がけて生活してみてください。
1. 1時間のうち、座っている時間を5分短縮する。
2. 30分おきに席を立ち、運動やストレッチをする。(スマートフォンやスクリーンセーバーで30分おきにアラームを設定して、肩回しやスクワットなどをしてみましょう。他にもUP by JAWBONEやFitbitのようなアプリ連動型の便利ツールの活用もおすすめです。)
3. 電話中は立って話す。
4. バランスボールを椅子として利用する。(バランスボールは姿勢を正し、体幹や足腰の筋肉を鍛えてくれます。)
5. 高さ調節ができるデスクに変更する。(立ったり座ったり体勢を変えられるデスク。実際にFacebook Japanでは採用されているそうです。)
6. かかとを上げ下げする「つま先立ち運動」をする。(足の筋肉を動かし血流を促す。)
7. こまめに水を飲む。
8. 昼休みには会社の外に出る。
9. エレベーターの代わりに階段を使う。
10. トレッドミルデスクを使う。(ランニングマシーンとデスクが一体化したもの。日本ではまだあまり馴染みはありませんが、欧米では注目され始めています。それだけ一日中座っていることの危険性に対する認知が高まっているからです。)
人間の身体は座っているためではなく、動くようにできているのです。歩いたり、立ったり、座ったり、体勢を変えて筋肉を動かし、脂肪を燃やす酵素のスイッチを入れるようにしましょう!
Lots of Love, Erica
(出典1) Van der Ploeg., H. P., et al., “Sitting Time and All-Cause Mortality Risk in 222 497 Australian Adults,” Archives of Internal Medicine, . 2012, vol. 172, no. 6, pp: 494-500.
(出典2) Bennett, Drake, June 28, 2012 “Kill Your Desk Chair –and Start Standing”, Business Week.
(出典3) Hamilton, M. T., et al., “Role of Low Energy Expenditure and Sitting in Obesity, Metabolic Syndrome, Type 2 Diabetes, and Cardiovascular Disease,” Journal of Diabetes, November 2007, vol. 56, no. 11, pp: 2655-2667
(出典4) Harvey, Sarah, “Chuck the chair and lose weight,” Life & Style, 2010. Grant Schofield, Professor of Public Health at Auckland University of Technology (AUT).
(出典5) Hamilton M.T., et al, “ Suppression of skeletal muscle lipoprotein lipase activity during physical inactivity: a molecular reason to maintain daily low-intensity activity,” Journal of Physiology, September 2003, vol. 1, no. 551, pp: 673-82.
Illustration by Joel Kimmel.
Image Courtesy of Wired.
Comments are closed.