不安定な血糖値は、肌トラブルを起こしたり体重管理を困難にしたりと、美容のみならず健康をも損ねる原因となることはよく知られています。しかし、これに加え、低血糖が原因で配偶者やパートナーに対して怒りを覚えやすくなったり攻撃的になる傾向があるという興味深い調査結果が最近新たに発表されました。
今年4月に発表されたばかりの研究(出典1)によると、低血糖が夫婦間の互いに対する怒りを引き起こしたり、配偶者へ激しい非難を浴びせたりする原因にもなっているとのことで、夫婦喧嘩にとどまらず家庭内暴力にさえも何らかのかたちで関係するという事が初めて証明されたのです。
この研究では、107 組の夫婦を対象に、朝と晩にそれぞれの血液中のグルコース(ブドウ糖)値を3週間に渡り測定しました。その値をもって毎晩配偶者に対する怒りの度合いを予測しました。すると、グルコース値が低い(低血糖である)ほど配偶者に怒りをぶつけたり、激しく相手を攻めたりする傾向があるということが明らかになりました。また、夫婦仲が良いと回答した人ほど、配偶者に対する怒りを低血糖時により強く表す傾向にあるという結果も出ています。
これは一体どういうことでしょうか?怒りや攻撃的衝動を自制心でコントロールするにはそれなりのエネルギーが必要となりますが、このエネルギーの供給にグルコースが一役買っています。グルコースはいわば脳が働くための燃料なのですが、この燃料が乏しくなると、人は怒りや攻撃的衝動といった感情を抑制することが困難になってしまうのです。人間の脳の重さは体重の約2%にすぎませんが、その脳が消費するエネルギーは体が消費する総エネルギーの約20%にも値します。こと消費エネルギーという観点においては、脳は実に手のかかる器官で、この他にも多くの栄養素を必要とするのです。
さらに、低血糖はカラダの「戦う/逃げる」スイッチ(急性ストレス反応)を作動させるアドレナリンやノラドレナリンといったホルモンの分泌を助長し、これが更に人を攻撃的にしたり不安にしたりイライラさせたりしてしまうのです。心配性で怒りっぽくなる原因はもちろん他にも考えられますが、私たち自身が脳に与える燃料の多寡が感情の自制力にも関わってくるということです。これを言い換えれば、私たちが日々何を食べるかによって、その力をコントロールできるということなのです。
適正な血糖値を保つ上での最大の敵は、何よりも精製された炭水化物を空腹時に過剰摂取することです。例えば、ジャムを塗ったトーストやベーグル、サンドイッチなどを食べたとしましょう。このような精製された炭水化物は即座に糖分として体内に消化吸収されます。この吸収された糖分が血糖値を急上昇させ、その後すぐに急降下させてしまうのです。これは、血糖値の上昇に反応した膵臓が、体内の細胞に糖を運ぶ役割を持つホルモンであるインスリンを大量に分泌することで、体内の細胞がその糖を吸収してしまうため、血中の糖(血糖値)が急激に減少するからなのです。また、食事抜きや極端なダイエット、空腹な状態でも血糖値は同様に下がってしまいます。
低血糖を防ぐためには、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。1 日を通して血糖値を安定させるために、食事毎に良質のたんぱく質、未精製の穀類、豆類、黄色野菜、そして良質の油を摂りましょう。バランスの悪い食事をすると、体内のエネルギーレベルがジェットコースターのように急上昇しては急降下し、エネルギーを消耗して不機嫌になったり疲れやすくなったり、さらには怒りっぽくなる事もあります。食事は大体4時間おきに取り、常に健康的なおやつを常備しておきましょう。
低血糖はあなた自身のエネルギーや感情の抑制力の低下を意味し、あなたを「モンスター」に変貌させてしまう恐れすらあるということを覚えておいてください。だからこそ、お腹が空いているときには、夫婦間で重要な事やデリケートな問題について話し合うことは避けた方がいいかもしれませんね。
Lots of Love, Erica
(出典1) Brad J. Bushman, B. J., et al., “Low glucose relates to greater aggression in married couples,” PNAS, April 14, 2014 DOI: 10.1073/pnas.1400619111
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