ストレスを軽減をしながら心の健康を保ち、免疫システムを高めることは、先の見えない不安な日々が続く今、私たちの心身の健康を守る上で、これまで以上にその重要性は高まっています。本日はこれらを同時に、しかも簡単に成し遂げることができる素晴らしい方法をお伝えしたいと思います。それは、「自然との触れ合い」です。この自然との触れ合いがもたらす効果を、欧米ではビタミンに例えて“ビタミンN”(Nature=自然)と呼ぶことがあります。実際にそのようなビタミンが存在するわけではありませんが、それだけの嬉しい効果があるのです。
その効果の1つ目として、免疫システムを高める効果があります。フィトンチッドと呼ばれる木々や植物から放出される物質があり、その天然の香りはアロマセラピーのような効果があると言われています。森や公園を散歩する際に、私たちはこのフィトンチッドを吸い込み、その効果を体に取り入れることができます。
日本医科大学の研究(出典1)によって、このフィトンチッドがナチュラルキラー細胞(NK細胞)と呼ばれる白血球の一種を増加させることが判りました。ナチュラルキラー細胞は、ウイルス等から免疫システムを守る働きをすることが証明されています。
外出が難しい方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな方にオススメしたいのが、檜オイルです。ディフューザーでお部屋に拡散させてみましょう。フィトンチッドが放出されますので、ナチュラルキラー細胞の増加が期待できます。(出典2 )オフィスでの使用もオススメです。オイルは人工のものでなく自然由来の物を選んでください。
そして2つ目に、ストレスの軽減効果があります。森林浴などで自然に触れ合うことによって、ストレスホルモンと呼ばれるコレチゾールの分泌を減らす効果があることが、多くの研究によって示されています。(出典3)逆にこのコルチゾールの分泌が慢性的に高まると、免疫システムが低下することが判っています。自然と健康の関係については日本で最先端の研究が行われており、森林浴が身体に及ぼす影響についても研究されています。例えば、15分間自然の中を歩く場合と15分間街中を歩く場合、自然の中を歩く方が、血圧、心拍数、コルチゾール値が、いずれも顕著に低いことが分かりました。それだけでなく、副交感神経と呼ばれるアンチエイジングの神経機能が非常に活発になったという結果が出ています。(出典4)
3つ目に、心の健康を保つ効果です。米スタンフォード大学の研究(出典5)により、自然との触れ合いは、うつ病予防:ルミネーション(反芻)の改善に効果があることが判ったのです。ルミネーションとは、ネガティブ思考の反復を意味します。例えば、恋人と別れたこと、入社試験に失敗したこと、誰かに何か言われて傷ついたこと、自分の欠点、恥をかいたりがっかりしたことなどを同じ曲が何度も流れる壊れたレコードのように、繰り返し頭の中でクヨクヨと考えてしまうことです。ルミネーションは、うつ病、 不安障害、その他の精神病の発症リスクにも関連しており、ネガティブな感情を司る脳梁膝下野という部分の働きを活発にします。もし、ルミネーションが長期間続くとうつ病を引き起こす原因にもなりかねません。この研究では、精神的に健康な人、中でも生活に多くのストレス要因が多く存在する都市部に住む人を対象に、自然の中を散歩するとルミネーションが改善されるのかどうかという調査を行いました。半数の被験者には樫の木や低木のある草原を90分間散歩してもらい、残りの被験者には都市部の4車線もある交通量の多い道路沿いを散歩させる実験を行いました。被験者の脳を実験の前後で比較したところ、自然の中を散歩した被験者のルミネーションには改善がみられ、脳梁膝下野の活動も低下していました。一方で、都市部を散歩した被験者の脳にはそのような変化はみられなかったのです。
「自然と触れ合う」のは難しいことではありません。自然の中でジョギングしたり運動も良いですが、ただ自然の中に5分間居るだけでも気分が改善することも判っています。幸運なことに、日本の国土は約70% が森林で覆われているため、気が向けばハイキングをしたり、自然を楽しんだりできる環境にあります。自然から遠く離れた都市部にお住まいの場合は、近隣の公園や神社を訪れてみましょう。バルコニーでトマトなどの野菜を育てたり、室内で小さな鉢にハーブを植えてみるのも良いでしょう。鉢植えのようなとても小さな植物からでも、自然の持つ素晴らしいメリットを享受することが可能です。室内ならば、檜オイルをディフューザーで拡散させて自然の香りを楽しむのもオススメです。
ぜひ積極的に自然と触れ合い、ビタミンNの摂取を心がけてみてください。みなさんの心身の健康の為に。
Lots of Love, Erica
出典1: Morimoto, K., et al., “A forest bathing trip increases human natural killer activity and expression of anti-cancer proteins in female subjects,” Journal of Biological Regulators and Homeostatic Agents. Agents, vol. 22, no. 1, pp: 45–55.Li Q, Morimoto K, Kobayashi M, et al. A forest bathing trip increases human natural killer activity and expression of anti-cancer proteins in female subjects. J Biol Regul Homeost Agents. 2008;22(1):45‐55.
Li Q, Kobayashi M, Inagaki H, et al. A day trip to a forest park increases human natural killer activity and the expression of anti-cancer proteins in male subjects. J Biol Regul Homeost Agents. 2010;24(2):157‐165.
Li Q, Morimoto K, Nakadai A, et al. Forest bathing enhances human natural killer activity and expression of anti-cancer proteins. Int J Immunopathol Pharmacol. 2007;20(2 Suppl 2):3‐8. doi:10.1177/03946320070200S202
出典2:Li Q, Kobayashi M, Wakayama Y, et al. Effect of phytoncide from trees on human natural killer cell function. Int J Immunopathol Pharmacol. 2009;22(4):951‐959. doi:10.1177/039463200902200410
出典3: Davis, J. 2004. Psychological Benefits of Nature Experiences: An Outline of Research and Theory. Naropa University.
出典4:Miyazaki, Y., et al, “The physiological effects of Shinrin-yoku (taking in the forest atmosphere or forest bathing): evidence from field experiments in 24 forests across Japan, Environmental Health and Preventative Medicine Journal, January 2010, vol. 15, no. 1, pp: 18-26.
出典5:Bratman, G. N. et al, “Nature experience reduces rumination and subgenual prefrontal cortex activation,” Proceedings of the National Acadamy of Sciences of the United States of America, June 2015, doi: 10.1073/pnas.1510459112
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